なぜ健康診断が重要なのか? ―「今の状態」を正確に知るために
健康診断の最大の目的は、ご家族の「今のありのままの状態」を客観的に把握することです。毎日一緒に過ごしていると気づきにくい些細な変化や、診察をしなければ分からない体内の問題を明らかにします。
隠れた病原体の発見と将来のリスク管理
元気に見えても、体内に病原体を隠し持っている(潜伏感染している)ことがあります。普段は症状がなくても、ストレスや他の病気で体調を崩した際に、これらの病原体が急に活発化し、深刻な事態を引き起こすことがあります。
あらかじめ健康診断でこれらのリスクを把握しておくことで、いざという時に迅速で的確な治療を開始できます。これは、急死や治療の遅れを防ぐために極めて重要です。
当科で行う健康診断と日常ケア
当科では、定期的な健康診断を通じて、ご家族の健康をサポートしています。
🩺 健康診断コース
ライトコース
身体検査と便検査で基本的な健康状態をチェック
定期実施推奨
スタンダードコース
全身を広く浅く検査します。広さのイメージとしては、わんちゃんねこちゃんの健康診断と同じようなイメージで、動物種や性格に合わせて血液検査やレントゲンなどを組み合わせます
定期実施推奨
感染症コース(PCR検査)
犬猫の健康診断ではあまり一般的ではありませんが、エキゾチックアニマルでは重要な検査です。健康に見えても潜伏感染しているもの、明らかな症状が出ていなくても他の子にうつしてしまう可能性があるものを遺伝子レベルで検出します
最初1回+特定時期
最初に1回実施し、その後は新しい子のお迎え時、免疫力低下の方との同居時、症状が疑われる時などに実施
📝 ご利用について
・各コースの組み合わせも可能です
・ご自宅で採取した便をお持ちいただけます(毎日排便しない動物も多いため、新鮮な便が採取できましたらぜひお持ちください)
🔬 エキゾチックアニマルで特に重要なポイント
腸の健康について
腸の健康はとても重要です。エキゾチックアニマルでは、消化管内寄生虫が病原性があるものなのか、共生関係になるものなのかが正確には分かっていません。また、腸内細菌叢(腸の菌のバランス)についても同様です。
調子が良い時のひとりひとりの状態を把握しておくことが極めて重要です。これにより、体調を崩した際に、何が正常で何が異常かを正確に判断できるようになります。
感染症検査について
1回の検査で潜んでいる病原体をすべて検出できるわけではありませんが、適切な方法で行うことでリスクを大幅に軽減することができます。検査の精度を高めるため、適切な検体採取の方法をお伝えしますので、事前にご連絡いただくことをお勧めします。
💬 その他のサービス
- 飼育相談・アドバイス
- 日常の健康チェック方法の指導
- 爪切り・耳掃除などの日常的なお手入れ(健康診断と同時に受けていただくことが可能です)
⚠️ ご注意:ワクチン接種などの一般的な予防処置は行っておりません。
お迎え直後の健康診断を強くお勧めします
お家にお迎えしたばかりの時期は、新しい環境へのストレスから、隠し持っていた病気が最も表面化しやすいタイミングです。
飼い主様が「環境の変化に慣れていないだけかな?」と感じている不調が、実は病気のサインであることも少なくありません。この時期を放置してしまうと、急に具合が悪くなったり、乗り越えられたとしても将来的に大きな問題として再発する可能性があります。
具体的な病気の例:
- セキセイインコのマクロラブダス感染症(メガバク、メガバクテリア症、AGY)
- ヒョウモントカゲモドキのクリプトスポリジウム症
複数の動物と暮らす皆様へ
エキゾチックアニマルは、生涯で何度か新しい子をお迎えする機会があるかもしれません。新しくお家に来た子が、知らずに病気を持ち込んでしまうと、先住のご家族にまで感染を広げてしまう危険性があります。
お互いが安全で最適な関係を築けるよう、新しい子を迎えた際、そして定期的な健康診断をご検討ください。
自宅繁殖をお考えの皆様へ
特に、自宅で生まれた子たちは、親から潜在的に同じ疾患を引き継いでいる可能性があります。これは遺伝的な要因だけでなく、親が持つ病原体が子に感染することも含まれます。
繁殖前の健康診断が何より重要です。親となる動物の健康状態を事前に把握しておくことで、生まれてくる子たちのリスクを大幅に減らすことができます。
また、生まれた後の健康診断も欠かせません。すべての子の健康診断が理想的ですが、最低でも親と代表的な子だけでも検査を受けることで、お家の動物みんなの健康状態を把握し、適切なケアプランを立てることができます。
客観的なデータがご家族を守ります
健康診断で得られた客観的なデータ(血液検査の結果など)は、ご家族の「健康の記録」になります。これにより、かかりつけの動物病院が複数ある場合でも、どの獣医師も一貫性のある適切なケアを提供しやすくなります。
「突然死」や「手遅れ」を防ぐために
本当に心臓発作やてんかん発作などで突然死することもありますが、多くの場合、予兆があります。例えば、鼻水やくしゃみという些細な症状でも、鼻呼吸がメインのウサギでは急に呼吸困難を起こすことがあります。このような小さなサインを見逃さないことが、突然死を防ぐ第一歩です。
あなたの「気づき」+「最初の一歩」がご家族を救います。
体調が良くない動物が一瞬でも辛そうな姿を見せる時、それはもう「初期症状」ではありません。人の感覚での「気のせいかな?」という些細な変化でも、病状がすさまじい速さで進行し始めていることが珍しくありません。
特に北海道では、まだ健康診断や早期受診が広く定着しているとは言えません。治療が難しい病気もあるため、とにかく早めの初期治療が重要です。
「少し様子を見よう」― その数時間が、取り返しのつかない事態を招くことがあります。
勘違いだったとしてもいいんです。空振りで終わっても、全く問題ありません。大切な家族を守るために、どうかためらわないでください。